1006◆痛みを受けた時代の空気感と共に。『傷だらけの天使』 #週刊ドラマ語り

気になるドラマの感想、考察、思い付きを語らう「週刊ドラマ語り」。今回は「傷だらけの天使」について紹介します。

もしかして、ちょっと今と似ている時代、1974年に生まれた伝説のドラマ

全国民がパニックになったこと、マスコミの活動や生活にも大きく影響がでたこと。その後の生活様式の変化(省エネ)と影響が出た事など、2020年のコロナ禍と1970年代のオイルショックはちょっと似ているような気がします。
というわけで今回は、まさにその時代。46年前のドラマ『傷だらけの天使』をご紹介します。

同じような突如の痛みを受けた時代に、今とはちょっと異なるエネルギーを感じる様子の映像は、今と表現手法がちょっと異なるかもしれません。
半分ドキュメンタリーにも見える生々しいアクション。警察官との立ち回りなどもまるで美しさはなく、何ともかっこの悪いものですが、それがドキドキするわけです。
そもそもロケは、実際の新宿や渋谷の街中で行われていて、街の様子自体は本物です。代々木のビルは映画天気の子でも使われていたので、記憶になる人もいるでしょう。当時を覚えている人は思い出し、知らなくてもあの時の新宿を味わいたい人にはたまらないかも。
役者の佇まいも、全員本物といった感じがします。セリフ回しだけを聞くと大袈裟な感じもあって特徴的なのですが、16mmフィルムを介して観ると、ある意味怖いというか、笑顔なんだけどその奥に何があるのだろうと、気になってくる、その世界の本物に見えてきます。

密接、不潔、セクハラのオンパレード ろくでも無いのに目が離せない二人

時代を経てドラマはどんどん変わっていくのだと思います。
今と比べると無駄にエッチなシーンはあるし、街中ゲリラ風な撮影だし、違法行為は連発だし、セリフは聴きとり辛い。特に何をやってもごろごろ転げまわってゴミ箱がひっくり返るというきたなさ、なぜだか顔がちかい感じ、生々しいを越えたセクハラハレンチシーンについては「おいおい」と思うこともある。いや当時も視聴率を下げる原因にもなったのだから、違和感あったかもしれないくらい。これらの表現はひとつの時代、価値観とおそらくは制作陣たちの戦いの記録でもあると思います。

制作陣でいうと、監督も脚本もキャメラも大物ぞろいです。監督は神代辰巳、深作欣二、恩地日出夫、工藤栄一ほか、脚本は市川森一、柴栄三郎ほか、カメラは木村大作など。音楽は井上堯之バンド、衣装デザイナーは菊池武夫だったりします。
物語は、青臭いチンピラ二人組みが探偵事務所に雇われて色んな事件を解決(巻き込まれる)というもの。アクションから人情、ハレンチ、青春、権力など、要素はさまざまである意味バラエティに富んでいます。明確な連続性があるわけではなく、1回ごとで楽しめる作品ですが、最後に至る流れを味わうには、修と亨のかっこの悪い日々をしばらく追いかけてもらいたいと思います。

多くの人が痛みを受けたであろうあの頃も、世の中の変化は凄まじいものだったかもしれません。
当時ですら、時代の狭間に消えそうな存在だった二人の生きざまは、カッコいいし切ないのです。

 


オマケ
岸田今日子が演じる綾部貴子がしばしばきいている曲。マツコの部屋の曲と記憶の人もいるかも。
(映画『マズルカ』主題歌「Ich spur in mir」 Pola Negri: MAZURKA, Odeon 1935)

<紹介ドラマ>
◆傷だらけの天使
1974年10月5日から1975年3月まで放送(土曜22時から 全26話) 日本テレビ
主演:萩原健一、水谷豊、岸田今日子、岸田森、西村晃、ホーン・ユキほか

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以上、

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