1441◆今、怖いとは何かを突き付けられる。ゲーム、映画と続く『返校』を味わうための入口的話 #タネスケ感想

ゲーム、映画、ドラマと展開する『返校』という作品群について紹介します。ちなみに返校(detention)とは「居残りの罰」といった意味。1960年代の台湾を舞台にしたゲーム作品は、今台湾を生きる人々、そして僕らの隣にある恐怖を表現している気がします。

台湾、白色テロ、二・二八事件、
知ることで恐ろしさがより立ち上がる――

2017年発売されたゲーム「返校」。私は、Switchで遊んでいます。横スクロールでキャラクターを動かして謎を解いていくシンプルなアドベンチャーゲームで、ジャンルはいわゆるホラーです。しかし、歴史や文化、社会、そして日常と地続きの物語は、絵空事で終わらず、「私」にリンクしてくるとして作品で、インタラクティブの価値を久々に思い起こさせました。
そんな返校は、インディーズ作品ながらヒットし、2019年にゲームを原作に映画化しそれも台湾で大ヒット。さらにドラマ化(続編的な内容)もされています。ゲーム、映画それぞれ単体でも魅力的な作品ですが、キーワードやアイテムひとつひとつの背景を紐解きたくなる本作は、台湾の歴史文化事情に詳しくない自分としては全体を楽しみたくなります。
個人的には、映画、ゲーム、ドラマの順番がよいかと。まず映画はやはりホラーなので極力何も知らない方がいいかと思いますし、世界観を地図のように入れることができます。次いでゲームをやると、白色テロなど台湾の基本的な歴史を把握しているので、一つ一つの要素が粒だって見えるようになり個々の短いテキストもより染みます。ゲームは自身とゲーム内の世界との距離感自体が魅力なので映画を観ていても私はいちいち驚いています。逆に、映画と共有するアイテムを見つけるたびに嬉しくもあり意味合いもより深く伝わってきます。ドラマ版は30年後の物語なので、「返校」の基礎知識や楽しみ方を知ったうえで応用篇として楽しむとよいかと。
実のところ、普段、ホラーというジャンルは観ることも遊ぶこともほとんどありませんが、「怖い」とは何かについて誰しもが重く考えさせられる本作は、ホラーである理由があると感じながら、満喫することができます。(ポン)

<映画の感じどころ>
1.ホラーである意味を感じていく自らの視点
2.社会事象だけでない「文化、生活慣習」の存在
3.自分ならどうなってしまうだろうか、考える

<ゲームのやりどころ>
1.テキストは音読みを。背景絵も慌てず眺めたい
2.わからないことがあったらちょっとだけ調べて
3.目的はクリア。でもあなたがその場にいるつもりで進めて

 

◆映画『返校 言葉が消えた日』
自由が罪と教えられた時代。あなたなら、どう生きましたか?
2019年製作/103分/R15+/台湾 原題:返校 Detention
監督:ジョン・スー/ファン・レイシン役ワン・ジン、ウェイ・ジョンティン役ツォン・ジンファ
https://henko-movie.com
映画ドットコム

◆ビデオゲーム『返校 Detention』
東アジア、主に台湾の文化と宗教観、風習などを取り込んだホラーアドベンチャーゲーム。1960年代の白色テロ下の台湾を舞台に、プレイヤーは冥府の存在が跋扈する朽ちた学校の中を歩き回り、この恐るべき場所に隠された真実を探し出す。
開発:Red Candle Games(台湾)
Switch(ニンテンドーストア)※体験版あり
steam
・公式サイト https://shop.redcandlegames.com/ja-JP/games/detention

◆ネットフリックスドラマ『返校』
映画やゲームで描かれた時代の30年後を舞台としたドラマ版。
https://www.netflix.com/jp/title/81329144

 

<参考>
◆忘れたの?それとも、思い出すのが怖い?――台湾映画『返校』をみて考える、歴史への向き合い方
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00770/
キーワード:韓国映画振興委員会(KOFIC)の「多様性映画」助成の諸条件

◆台湾の人気ホラーゲーム映画化! 歴史の暗部えぐる『返校 言葉が消えた日』原作クリエイターが語る“社会現象ヒット”の秘密
https://www.banger.jp/movie/61514/

◆映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた
https://www.4gamer.net/games/396/G039690/20210629073/

◆放課後、うたた寝から目覚めると…60年代の台湾で起きた“黒歴史”をホラー調で描く 「返校 言葉が消えた日」を採点!
https://bunshun.jp/articles/-/47533

◆『返校 言葉が消えた日』ゲームの本質を凝縮、メディアを超えた翻案の可能性
https://cinemore.jp/jp/erudition/2109/article_2110_p1.html

 

<関連作品>
◆『悲情城市』(侯孝賢監督 1989年)
~日本統治時代の終わりから、中華民国が台北に遷都するまでの台湾社会が描かれた。二・二八事件を台湾国内で初めて取り上げた作品。ヴェネティア国際映画祭で金獅子賞を受賞

◆『好男好女』(侯孝賢監督 1995年)
~二・二八事件と1940~50年代の白色テロの時代の物語

◆『スーパーシチズン 超級大国民』(萬仁監督 1995年)
戒厳令下の台湾を正面から描いた、台湾ニューシネマの最重要作のひとつとされるドラマ。1950年代の台湾。読書会に参加したという理由だけで逮捕された青年・コー。彼は獄中での拷問に耐え兼ねて、逃走した友人・タンの名前を警察に漏らしてしまう。

◆『クーリンチェ少年殺人事件』(エドワード・ヤン監督 1991年)
~1961年6月に台湾で起こった中学生男子による同級生女子殺傷事件をモチーフにした青春映画。

◆『GF*BF』(ヤン・ヤーチェ監督 2012年
~戒厳令下の1985年から2012年までの台湾を舞台に、男女3人が織り成す友情や愛をつづる青春ドラマ。白色テロ末期の1985年が舞台の1つ。

以上、
週末の配信回「タネメガネ」では今回の番組を少し振り返ったりしています。そちらもどうぞ。
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